92歳のリピーター

Tさんは、今年4月に「カエ・プーランク」のある日生中央近辺に引っ越してこられた92歳の男性。
週2回は来店され、珈琲を飲んで帰られます。 よく年下の者が、年配の方に子供を対するような言葉づかいで接する光景を見かけますが、Tさんは決してそういうことは出来ない雰囲気というか、威厳をもっておられます。
Tさんは、また高齢にもかかわらず「戦争体験を語る」ため色々なところに出向いて講演を行ったりもしておられます。
一度、Tさんが本をお持ちだったので、ふと書名を見てみると何と「i-pad入門」!
まったく、この向学心には頭が下がります。

さて、その日の「本日の珈琲」は、ニューギニア・AA・キンデン・エステートという豆だったのですが、それを注文されたTさん、珈琲を飲んだあと、感慨深げに「この珈琲は、本当にニューギニアの匂いがする… 思い出しますよ。」とおっしゃるのです。
聞けば、太平洋戦争の時、ニューギニアにおられたということなのです。
匂いや味覚は、ある意味、視覚などよりずっと強烈な記憶として残るということを聞いたことがありますが、まさにそれだったのでしょう。
例えば、音楽でも、ブラームスの曲を聴けば、(行ったこともない)北ドイツの風景~イメージ が言葉で説明されるよりずっと深く鮮明に心に浮かびますが、珈琲の味もそれと同じことが言えるのかもしれません。
そういう意味では、赤道周辺の国々だけでなく、ロシアや北欧、スペインあたりの珈琲なんていうのがあれば、面白いかもしれませんね。

2013年7月11日